とある投資家の脳みそ

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ディベート物語

大学3年〜社会人1年生まで通っていた社会人中心のディベートクラブ。
初めて試合を見学した時、カルチャーショックを受けるほどの議論の応酬だった。
こんなすごいこと、自分が初めての試合をできるようになるのですら、半年はかかるだろう・・・
それまでは見学させてもらおう。そんな気持ちでいた。


試合後、年配で白髪の社会人に「試合しなきゃうまくならない、見てるだけじゃうまくならない。」「君のためだ。」と次回の試合に参加するよう言われた。
いくら自分には無理だと断っても、このように諭され、遂に次回の試合をやることに・・・


初試合・・・100%準備不足・・・全く試合にならないほどの駄目っぷりで、立論はなんとかこなしたものの、
第2反駁は全く分からずベテランパートナーさんに試合中にアドバイスをもらい(ほんとは許されない)アドバイス通り繰り返し述べるというなんとも情けない結果に。


基本的にディベートのやり方の本を読んでいなかったり(自分が駄目)、パートナーと試合に向けての準備をすることができなかったり(運が悪い)、結局5.6試合目くらいまでは全く駄目だった。
数十人の聴衆の前で準備不足の理論のない無茶苦茶な立論をし、後々反駁するパートナーに迷惑をかけたり、対戦相手に小学生にでも分かるような矛盾点を呆れられて反駁されたり、聴衆、ジャッジにもえらく馬鹿にされたコメントをもらったりした。もちろん圧倒的な負けで。
自分でも認めるほどの駄目っぷりだった。今思い返しても情けない。


「自分にはできない。」と思い辞めようとしたが、毎回試合後の飲み会がとても楽しくディベートとは別の面があり、皆社会人は大人であり、私のしおれた心はその度に「また来よう。」という気に変わるのだった。
また、40歳を過ぎてディベートを始めた社会人の方に「学生時代にディベートに出会えたなんて羨ましい。」「40過ぎたらなにごとも全然伸びない。」と言われ「そうか、私は今とても恵まれたことをしてるんだな。がんばらなきゃな。」と思ったりした。


そんなこんなで、数ヶ月試合をしたり人の試合を見たり、通い続けた。
何回かベテランディベーターの人と試合前のミーティングをする機会を持つようになり、メールで準備を重ねるようになり、うまい人からディベート技術を吸収するようになった。
何人か同じ学生も私のあとから入ってきた。「後から入ってきた人に負けるわけにはいかない。」と頑張るようになった。
段々、試合でも味方、対戦相手、聴衆からほめられるようになってきた。


そんなある日、2週間後に試合することが決まり、他の大学のパートナーと入念な準備のもと、学校以外はほとんど試合のことだけを考えて臨んだことがあった。
ディベートのやり方が分かって楽しくてしょうがなくなった時期だ。もちろん試合の緊張感はあった。
私は肯定側第一反駁を担当した。
入念な準備のお陰で、全て想定の範囲内の試合ができた。
結果、試合に勝ち、年間で百回以上ものディベートをジャッジしているディベート教育第一人者の先生から「2年ぶりに完璧な反駁を聞いた。成長した!」とコメントを頂いた。


このことは今でも自分の中で一番の大きな自信となっている。
どんなことでもゼロから一流になれるという自信がついた。
この自信はいつでも何かに挑戦するときに戻る原点だ。
肯定側第一反駁とは否定側の論理への攻撃と、味方の攻撃された論理の立て直しをするという試合の中での一番難しいが、一番の見せ場でもある重要な役割。
その第一反駁で、このお褒めの言葉をもらい、自分は努力すれば何でもできるのではないかと思えた瞬間だった。


自分がここまで伸びたのは自分ひとりの力ではなく、大勢のお陰だ。
私はディベートにより運よく「自信」という人生の宝物を手に入れることができた。
しかし、何かが足りなかった・・・


ディベーターは主に社会人で構成されており、彼らは平日の7時にはディベートの会場に集まることができる恵まれた社会人だった。
彼らはディベートの試合のための準備の時間を持てる非常に恵まれている人々であった。
何事もそうだが、試合のための準備時間を手に入れられる人が勝てるのではないか。
更に、試合のための資料にお金をかけられる人間だけが勝ち続けられるのではないか。
試合で勝つためにその分野の一流の人間を雇うこともできるわけだ。
私はそう思うようになっていた。


結局は、ディベートで勝ちたいのなら試合の準備のための膨大な時間を手に入れ、更に質の良い資料を集めるための潤沢な資金が必要なのではないか。
もっと言ってしまえば、時間はお金で変える。お金があれば働かなくてもいいのだから膨大な時間が手に入る。
結論は「お金だった。」


この結論に至って以降、私はディベートを追求するのではなく、お金を手に入れることを追求することにした。
そして、辿り着いた先は システムトレードであった。21歳のことだった。




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